2006年2月、北関東で開かれた骨董市をのぞくと、とある店先に水晶印材が並べて
残る4本は、全て「ススキ」、「星」あるいは「まりも」が入ったもので、大きさは2cm余りで
@ 印鑑に加工されたもの
A 過去に購入したのと同じように、印面は未加工で赤いラベル付きのもの
3.2 製作年代の推定
(2) 仮称”銅鐸形”は本当に誰が”印鑑”として使ったのか、またこのような形が流行した
あり、5本まとめて購入した。そのうちの一本は、「ススキ入り水晶」を加工したもので
既に印鑑の体裁を整えたもので、印面には「武井」という苗字が彫られ、朱肉もつき
印面の一部が欠けている所から、かなりの期間、所有者によって使い込まれたもの
であろうと推測できた。
水晶印材
私が初めて見る銅鐸形をしており、頂上部分には紐を通す小さな孔が穿たれている。
印面は未加工で、4本とも赤いラベルが貼り付けられ、墨で「イ?」などと「記号」が書き
込まれている点は、以前購入した印材と同じである。これらは、「商品見本」として
行商人が持ち歩いたり、地方の文具店などに預けて置いたものではなかろうかと推測
している。
これら5本全て、一見して山梨県甲州市(旧塩山市)竹森産の水晶を加工したものと
判った。
印材として水晶がもてはやされた時代はとうに過ぎ去り、今後作られることも少ないので
大切に保管するとともに、機会があればその都度入手したい。
( 2006年2月入手 )
2. 「水晶印材」採集品
今回入手した印材(印鑑)には、2種類ある。
「ススキ入り水晶」を直径15mm(5分)、長さ36mm(1寸2分)の円柱形に研磨し
印面には「武井」という苗字が彫られている。朱肉もつき、所有者によって使い込まれ
ていたと考えられる。

「ススキ入り」【高さ36mm】 印面
印鑑(印材)@
印材は、「ススキ」「星(雲母)」「まりも(緑泥石)」が入ったもので、銅鐸形(私の
つけた仮称)をしている。断面は長径9〜12mm(3〜4分)、短径7mm(2分余り)の
楕円柱状で、長さは21mm〜23mm(約7分)で、頂上部分は面取りがされ、紐を通す
小さな孔(径約1mm)が穿たれている。

「印材ラベル」【イ?】 「ススキ」「星」入り 「ススキ」「星」「まりも」入り
銅鐸形印材A
3. 水晶印材の謎
3.1 産地の推定
これら5本の印材(印鑑)には、全て「ススキ(苦土電気石)」【 Dravite:NaMg3Al6
(BO3)Si6O18(OH)4】が入り、中には「星(白雲母)」【Muscovite:KAl2(AlSi3)O10(OH)2】
そして「まりも(緑泥石)」【Chlorite:(Mg,Fe,Mn,Ni)6-x-y(Al,Fe3+,Cr,Ti)y□x(Six-4Alx)
O10(OH)8】が内包されているものもある。
これらの特徴から、山梨県甲州市(旧塩山市)竹森産出した、一般に「ススキ入り
水晶」と呼ばれているもの と考えている。
竹森産「ススキ入り水晶」【昔の採集品】
印材に付けられたラベルの記号が墨で「イ?」とか「ヒ?」と書かれ、昭和期(戦前)の
ペン書きよりも古い時代であることを示唆している。印材の寸法も寸・分と言った尺貫法に
基づいている。
しかし、素材から取れる最大の寸法に仕上げること優先したためか、寸法はやや
不揃いで±1mm程度のバラツキがある。
これは、竹森坑から水晶の良品が産出したのは明治末年までと伝えられ、それ以降に
作られたことを意味している考えられる。これらを考え合わせると、大正期(1920年頃)
〜昭和初期(1930年頃)に作られたものだろうと推定している。
4.おわりに
(1) 今回、私が仮に「銅鐸形」と名付けた面白い形をした、印材をまとめて購入できた。
このような形をしたものは、初めて眼にするもので、どのような客層を狙って
開発した商品なのかを知りたいと考えている。
私見ではあるが、高さが21〜23mmと小さくてさほど高価でもなくなく、頂上部に
開けられた小さな孔に紐をつければ可愛らしいものとなるところから、女性
特に子供や花柳界で働く女性向けではなかったと推測している。
のは何時のことなのか、近いうちに、六郷町にある「印章資料館」を訪れ、調査したい
と考えている。
5.参考文献
1)山梨県水晶商工業協同組合編纂:水晶宝飾史,甲府商工会議所,昭和43年